契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「あ、すみませんずっと立たせたままお待たせして。デスクすぐ片付けちゃいますから、もう少々お待ちください!」
「じゃあ、俺は車で待ってる。黒いの、そこから見えてるだろう?」
そう言って、先ほど私と花ちゃんがへばりついていた窓の方にちらりと視線を投げた彼。
やっぱりあの高級外車は、彰さんのなんだ……。
彼の持っている地位や財力を改めて感じ、こんなすごい人の婚約者のフリをするなんて私にできるのかと怖気づいてくる。
「じゃ、すぐ来いよ」
「は、はいっ」
しかし、彰さんの方は私のひるんだ様子なんかお構いなしにオフィスを出て行ってしまい、もう腹をくくるしかなかった。
私は特に目を惹く容姿でもないし育ちもよくないけれど、道重堂のお菓子に関することなら延々と語れる自信がある。
それでなんとかご両親との会話が盛り上がれば、大丈夫……かな?
自分を励ましながら会社を出て、彰さんの待つ車の前まで来た。
私の姿を確認した彼はいったん運転席から降り、スマートな動作で助手席のドアを開けてくれる。