契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
これは悪い冗談だ。そう自分に言い聞かせながら、ひきつった笑みで彼に尋ねる。
「戸籍謄本のことか? とある筋にお前の情報を調べてもらって母親に連絡したら、すぐに用意してくれた。お前のこと、このまま一生結婚できないんじゃないかと心配していたそうだから、〝親としてなんとお礼を言ったらいいか〟と感激されたぞ」
お、お母さんってば、いくら娘を貰ってくれる男性が現れたとしても、初対面の相手に戸籍謄本を渡すなんて信じられない!
「そもそも私、フリだから承諾したんですよ? 余命の短いお母様を安心させたいっていう、彰さんの親孝行のお手伝いができればって……ただそう思っただけで」
「ああ、そういえばそんなことを言ったか」
彰さんは他人事のように呟いて、ふっと鼻で笑う。
その態度に違和感を覚え、不吉な予感が胸をよぎる。まさか、お母様の体のことって……。
「母ならぴんぴんしているよ。病気だなんだというのは、婚姻届にサインさせるための嘘だ」
あっさり嘘を認めた彰さんに、呆気にとられてしまう。
「な、なんでそこまで……!」
実の母を病人に仕立て上げ、婚姻届にサインさせ、私の母に協力を仰いでまで、彼は結婚がしたかったの……?