契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
4.口づけは求肥の感触

高級料亭の一室で顔を合わせた彰さんのご両親は、物静かで優しく、とてもいい方たちだった。

ご夫婦ともに六十代で、お父様は道重堂の社長を退いてから別の分野の新事業に着手していて、それをお母様も手伝っているのだとか。

由緒ある道重堂を守ってきたお父様は、本来なら大切なひとり息子の結婚に色々と口を出したいこともあっただろう。

けれど、私が一般人であることにも、結婚が事後報告になってしまったことにも特に苦言を呈すことなく『ふたりで幸せになりなさい』と、穏やかに言ってくれた。

そしてお母様は、こんなぽっちゃり体型の私に『可愛らしい結奈さんは白無垢もドレスもよく似合いそうだから、結婚式は盛大にやりましょうね』と声をかけてくれ、彰さんとは契約結婚だという事実を一瞬忘れ、じーんとしてしまった。

あんなに優しいご両親のもとに生まれながら、なぜ彰さんはこんなにも――。

「なかなかだっただろ、俺の演技力」

私は帰りの車の中で、得意げに話す彰さんに呆れていた。



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