契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

彼ときたら、ご両親の前では〝恋愛感情ゼロ〟だという態度をいっさい見せず、終始私を甘い眼差しで見つめ、『可愛い』だの『心底惚れているんだ』などと、嘘八百を並べ立てたのだ。

そして、そのことに罪悪感はまるでない。

「すごいっていうか、二重人格なんじゃないかと心配になります」

私に冷たく言われても、まったく気にするそぶりもなく薄笑いを浮かべている。
ホント、何を考えているかわからない人だ。

「お前はまた一段と幸せそうに食べてたな。食後のあんみつ」

彰さんが思い出したように呟いた言葉で、口の中に先ほど食べたデザートの甘い余韻が蘇った。

私はご両親の前であるにも関わらず、あんみつの美味しさに悶えるように歓喜してしまい、彼らに『子どものころの彰みたい』と笑われてちょっと恥ずかしかった。

「あれ、特に餡子が最高でしたよ。彰さんもみつ豆じゃなくてあんみつにすればよかったのに」

そのとき、みつ豆を選んだのは彰さんだけ。さすがにご両親の前では言わなかったけれど、餡子をつけないなんてもったいない!と思っていたのだ。



< 42 / 244 >

この作品をシェア

pagetop