契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
しかし、彰さんの反応はそっけない。
「食後は普通さっぱりしたものが欲しくなるだろ」
「いや、甘いものは別腹ですから」
「結奈は特にな。ま、そうやってお前がうまそうに食べてるの眺めてれば、俺は満足だから」
そんな言葉とともに片手をハンドルから放した彰さんに、むにっと頬をつままれた。
「……痛いです」
「おー、見た目以上にやわらかい。くせになりそうな感触だ」
「くせにしないでください。っていうか事故りますから、ちゃんと両手でハンドル持って!」
「はいはい」
夫婦になったとは思えない、甘いときめきとは無縁のくだらない話をしているうちに、車は私の自宅へと到着した。
腕時計を確認したら、午後十時半をまわったところ。
お母さん、まだ起きているでしょうね……色々問いただしたいことがあるんだから。
車の窓から恨めし気に自宅を眺めていたら、彰さんが素早く運転席から降り、外から助手席のドアを開けてくれた。
「あ、ありがとうございます」