契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

「今日の褒美」

「ほ……褒美?」

ますますわけが分からない。ご褒美なら、私は本物の求肥をいただいたほうが……。

いまだどくどく脈打つ心臓を手で押さえつつそんなことを思う私に、彰さんはさっきとは違う、自然な微笑みを向けた。

「今日は、久々に両親のうれしそうな顔が見られた。たぶん、お前のおかげだ」

「え……。私、なにもしてませんよ? ただ、食べてただけです。恥ずかしげもなく食後のあんみつまで平らげちゃったし」

ご両親を喜ばせたというよりは、笑わせたって感じだと思うのだけど。

不思議そうな私の頬に、彰さんがスッと手を伸ばして優しく触れた。

「それでいい。そんなお前だから、欲しかったんだよ」

――トクン。さっきキスされた時とは違う、優しい胸の高鳴りが、心を揺らした。

いや、なにときめいてるのよ結奈。彰さんの言葉に、甘い意味なんかないはずでしょ。

「恋愛感情はないのに?」

上目づかいで睨んだら、彰さんは頬に触れていた手を引っ込めてポケットに突っ込み、悪びれもせずに言った。

「まぁな。それはそれだ」

「はぁ……。やっぱりあなたの人格がわかりません」



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