契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「これ、道重堂の水まんじゅうでしょ!」
「そうよ。彰さんが手土産に持ってきてくださったの」
「わ、私も食べたい! どこ? 冷蔵庫?」
「もう、お礼も言わずに意地汚い子ねえ。出してあげるからちょっと待ってなさい」
私の食い意地に呆れ、母がキッチンの方に向き直ったとき。
「すみません、結奈さんにこれをあげてください。僕はもう何度も食べていますし、もともと結奈さんとご家族のために持ってきたお菓子ですので。僕は、お茶だけいただきます」
……わ、出た。彰さんの猫かぶりモード。
しかし彼の本性を知らない母は、好青年オーラを出しまくる彼にまんまと騙される。
「そんな、いいのよ彰さん遠慮しなくて。すぐにもうひとつ出すから」
「いえ、遠慮というか、もともと僕は結奈さんがおいしそうに和菓子を食べている姿を見るのが好きなんです。彼女の笑顔を見ると癒されるし元気が出て、仕事をもっと頑張ろうって思えるので、彼女が食べたいものはなんでもあげたくて」
「まぁ……うちの結奈のことそんなふうに言ってくれるなんて」
母はしみじみ感動に浸り、目に涙まで浮かべている。
彰さんってば、また今回もすごい演技力だこと……。