契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
彰さんにちらりと冷めた視線を送ったら、素知らぬ顔をした彼に「どうぞ」と水まんじゅうの載ったお皿を勧められた。
はいはい、このお芝居に付き合えってことね。その対価が水まんじゅうなら、無視はできない。
「彰さん、ありがとう。私、これ大好きなの」
彼の隣に腰掛け、水まんじゅうのお皿を手に持ってしらじらしくお礼を言った。
「喜んでくれてうれしいよ。じゃあ、それを食べたら行こう」
「行くってどこへ?」
「決まってるだろ、俺たちの家だ」
「へ……?」
私たちの、家……?
言葉の意味がわからず、お皿を持ったままフリーズする。
そんな私の様子を見かねたのか、母が説明を加えた。
「まさかあなたってば、結婚したっていうのにいつまでも実家にいる気じゃないでしょうね。彰さんは、今日からあなたと一緒に暮らすために迎えに来たのよ。お父さんもさっきまでリビングにいたから挨拶は済ませたし」
「え……。えええっ!?」
今日からって、いくらなんでも急すぎませんか――!?
私は好物の水まんじゅうを食べるのも忘れ、驚愕して目を見開いた。