契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

簡単に荷物をまとめて彰さんの車に載せ、彼の車の助手席に乗り込む。すると父と母が門の外まで出て、笑顔で私たちを見送ってくれた。

すんなり見送られて楽といえば楽なのだけれど、名残惜しさのかけらもない彼らの姿には娘としてちょっと複雑なものを感じた。

昔から仲のいい両親のことだ。私がいなくなって、心おきなく家でラブラブできるとでも思っているんだろう。その夫婦愛は素晴らしいけどさ……。

ドライブ中そんなことを考え、なんとなく拗ねたような気持ちで過ごしていたら、いつの間にか目的地に到着していた。

いつものように助手席のドアを開けてくれた彰さんに頭を下げつつ車の外に出ると、目に飛び込んできたのは立派な和風の邸宅だった。

高い塀に囲まれているせいで全体は見えないけれど、建物の屋根が遠くに見えるので、庭が広いのだろう。

ここが私たちの家……?

ぼうっと外観を眺める私のもとに、着替えなどの荷物が入ったキャリーケースを車から降ろした彰さんが来て言う。

「車、車庫にしまうからちょっと待ってろ」

「は、はい」



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