契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
彰さんのリモコン操作でガレージのシャッターがゆっくり上に開いていく。
スペースは二台分あり、シャッターが上がりきるのと同時にお目見えしたのは、乗ってきた車とは違うメーカーの高級外車。
二台でいったいおいくらなんだか……。
庶民感覚でそんなことを考えていたら、車庫入れを終えた彰さんが出てきて、私に近づくなり急に顔を覗き込んできた。
ちょっと、突然美しいお顔で迫られると心臓に悪いのですが。
「な、なんでしょう?」
「いや、ずっと浮かない顔してたからどうしたかと思って。水まんじゅうの食い過ぎか?」
もしかして、心配してくれた……?と思いかけて、最後の言葉にがくっと脱力した。
この人、私の機嫌の良し悪しは全部食べ物関係だと思ってるに違いない。
「違いますよ。うちの両親ってば、こんな急ピッチで大事なひとり娘を嫁に出すことになったのに全然寂しそうじゃなかったなーって思ってただけです」
不貞腐れる私に、彰さんは「ああなるほど」とうなずいた。