契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
倉田さんが日本酒を持ってきてくれると聞いていたので、いちおうそれに合うお料理を考えたつもりだけれど、その内容は和洋折衷。
美味しければなんでもあり!という精神のもと、魚介のカルパッチョ、牛肉のたたきサラダ、長芋の梅和え、鶏レバーの甘辛煮、鮭の竜田揚げなどを彰さんと手分けして作った。
倉田さんは「すごいご馳走だ」と喜んでくれて、私たちはさっそく乾杯した。
「いや~、本当にうれしいよ。うちのお得意さんで、誰よりうちの和菓子を愛してくれてる結奈さんが彰の嫁になってくれて」
相当感激している様子らしい倉田さんは、ガラスのお猪口に口をつけては幸せそうな吐息を漏らし、しみじみ頷いている。
「倉田さんは、子どものころから彰さんご存じなんですよね。彰さんって、どんな子でした?」
彼のことをまだほとんど知らない私は、興味本位で尋ねてみる。
「そうだなぁ。なんつーか……子どものくせに冷めてて生意気な奴だったなぁ」
「冷めてて生意気かぁ。今とあんまり変わらないですね」
正直な感想を言ったら、隣の彰さんが「げほっ!」とむせて私をじろりと睨んだ。