契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「な、なんですか。私、間違ったこと言ってます?」
「……いや別に」
「じゃあ自覚してるんじゃないですか。もっと優しく、素直になった方がいいですよ?」
「うるさいな」
私の小言を煩わしそうにあしらう彰さん。その様子を見ていた倉田さんが、おかしそうに笑い出す。
「いやぁ、彰がここまでやり込められるとは。愉快で酒がすすむな」
「……俺は不愉快で酒が進みます」
彰さんはそう言ってぐびっとお猪口のお酒を一気飲みした。
なんとなくだけど、今日の彼はいつもと違う。自分の子ども時代を知る倉田さんがいるからか、居心地悪そうというか。
その後も口数の少ない彰さんはお酒ばかりを傾け、二時間ほど経過したころにはテーブルに突っ伏してつぶれてしまった。
「あらら……そういえば、こいつあんまり酒強くなかったんだっけ」
「えっ。そうなんですか? 大丈夫ですか? 彰さーん」
ぽんぽんと肩を叩いてみるけど、微動だにしない。眠っちゃったのだろうか。