契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「ベッドに移動させた方がいいでしょうか……」
「そうだな。俺がやるよ、結奈さんは座ってて」
「すみません」
お客様に夫のことを任せて申し訳ないけれど、ここは男の人の腕力に頼ることにしよう。
倉田さんは彰さんに肩を貸し、まだ眠そうな彼を引きずるようにして寝室へ連れて行った。
私はその間に、用意していたデザートを冷蔵庫から出してお皿に盛りつける。
そして倉田さんが戻ってくると、恐縮しながらデザートをすすめた。
「プロの方に食べてもらうのは気が引けますけど、どうぞ」
「お。大福かい?」
丸くて白い外観を眺め、倉田さんが言い当てる。
「はい。夏なので、餡子のほかに巨峰を入れてみました」
「いいねえ。俺も職人だから、そういう遊び心は大好きだよ」
ニコニコしながら大福を口に入れ、ゆっくり味わう倉田さん。その後、お世辞かもしれないけれど「おいしいよ」と褒められ、ホッとしていたのだけれど。
「……これ、彰は食べたのか?」
突然神妙な顔つきになった倉田さんに聞かれて、私は苦笑しながら首を横に振った。