契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

頭の中が疑問符でいっぱいになるなか、道重社長は再び私に座るように促し、自分もさっきまで倉田さんが座っていた席に腰を下ろす。

カフェには他に誰もいないし、お客さんのいる販売スペースからは死角になっている席なので、静かすぎてなんだかいたたまれない。

社長の様子をそうっと上目遣いでうかがうと、まっすぐにこちらを見つめる漆黒の瞳とばっちり目が合ってしまった。息が止まるような感覚がする中、社長が口を開く。

「お前、独身か?」

「は……?」

私はたぶん、ハニワみたいな顔で固まっていたと思う。

だって、取材の話かと思っていたところに、この質問。それにさっきまで丁寧な口調で話していたのに、いきなり『お前』って。しかも、『独身か』って。

あまりにぶしつけというか、初対面の人にする質問じゃないよね?

「あの、今のご質問はどういった意図で」

あいまいに微笑みながら、彼の真意を探ろうとする。

「ああ……説明不足だったな。お前が独身でないなら諦めるが、独身ならあることを頼もうと思っている。で、どちらなんだ?」

説明不足といいながら、短く語っただけで再び問いかけてくる彼。

いや、まったく説明になってませんけどー!


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