契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

彼の新たな一面を知るたびに、胸にほんのり明かりが灯るような感覚になる。

時々訪れる胃酸が逆流するような胸のつかえ感も、おそらく彰さんのせいなのだろうと、なんとなく気づき始めていた。

「ああ、いい湯だった」

リビングのソファでテレビを見ていたら、今夜も浴衣姿の彰さんがシャンプーの香りと色気をぷんぷん漂わせながらお風呂から上がってきた。私は無意識にその姿に見とれ、ぼんやりしてしまう。

「どうした結奈、間抜けな顔して」

私は「なんでもないです」と小さく首を横に振り、テレビに向き直る。

にしても間抜けな顔って……妻に対して失礼な。

悶々としている私をよそに、彰さんは冷蔵庫からペットボトルのミネラルウォーターを取り出し、私の隣に座る。そしてひとくち水を飲むと、こう尋ねてきた。

「そういえばお前、会社の夏休みはいつなんだ?」

「明後日から四日間です。彰さんは?」

「俺は……その翌日からだな。結奈に予定がなければ、ふたりでどこか出かけようか」

私の予定を気にして、一緒に過ごすことを提案してくれる。どうしてだろう、ただそれだけのことで心が浮き立った。



< 77 / 244 >

この作品をシェア

pagetop