契約新婚～強引社長は若奥様を甘やかしすぎる～

内心舞い上がる自分は押し隠し、彼と一緒にしたいことを頭に思い浮かべる。

「うーん。どこに出かけても混んでますし……あっ！」

私はテーブルに置いていたスマホを手に取って操作し、ある画面を彰さんに見せる。

「別に夏休みの間じゃなくてもいいんですけど、ここに一度行ってみたくて……」

スマホに表示されているのは、流行りの洋菓子店『vanilla(バニラ)』が手掛けるスイーツバイキングの宣伝ページ。

vanillaは数年前から急成長を続けていて、関東を中心に店舗数を増やしているだけでなく、新しい試みとしてスイーツバイキングの店舗を春にオープンさせた。

オープン当初にそこを訪れた同僚が〝味もサービスも最高だった〟と話していたから気になっていたんだ。

「vanillaか……」

けれど、スマホの画面を見た彰さんはなぜか表情を曇らせた。

あ。もしかして、洋菓子だからかな？

「あの、私は別にＳＮＳ映えするとかそんな不純な目的があるわけじゃありませんよ？　ただ、美味しいお菓子を彰さんと一緒に食べたいだけで……」

私が言うと、スマホ画面を覗いていた彰さんの瞳が今度は私に向けられ、至近距離で目が合った瞬間、顔に熱が集中していくのがわかった。