契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

本当はもっと詳しく聞きたいところだけど、目の前の社長からは有無を言わさぬオーラを感じる。

まぁ、独身か独身でないかなんて、別に大した個人情報でもないし、いいか……。

「……独身、ですけど」

観念して答えた私に、社長はふうとホッとしたような息をついた。そして、改めて射抜くような眼差しを私に向け、ひとこと。

「俺と結婚してくれないか?」

……はぁなるほど。結婚してほしいから、独身かどうかを確認したわけね――って。

「けっ……けけ結婚!?」

衝撃の発言に、私は椅子の上で大きくのけぞった。

何を突然おかしなことを言っているんだろう、この和服イケメン社長。

私たち初対面だし、そもそも住む世界も全く違うし。どこをどう考えてその二文字が出たっていうの?

驚きで物も言えない私に、社長は少し考えてから付け足すように言った。

「ああ……悪いな。また説明不足だった。結婚というか、婚約者の〝フリ〟をしてくれればそれでいい」

「ふ、フリ……?」

「ああ……実は」



< 8 / 244 >

この作品をシェア

pagetop