契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
本当はもっと詳しく聞きたいところだけど、目の前の社長からは有無を言わさぬオーラを感じる。
まぁ、独身か独身でないかなんて、別に大した個人情報でもないし、いいか……。
「……独身、ですけど」
観念して答えた私に、社長はふうとホッとしたような息をついた。そして、改めて射抜くような眼差しを私に向け、ひとこと。
「俺と結婚してくれないか?」
……はぁなるほど。結婚してほしいから、独身かどうかを確認したわけね――って。
「けっ……けけ結婚!?」
衝撃の発言に、私は椅子の上で大きくのけぞった。
何を突然おかしなことを言っているんだろう、この和服イケメン社長。
私たち初対面だし、そもそも住む世界も全く違うし。どこをどう考えてその二文字が出たっていうの?
驚きで物も言えない私に、社長は少し考えてから付け足すように言った。
「ああ……悪いな。また説明不足だった。結婚というか、婚約者の〝フリ〟をしてくれればそれでいい」
「ふ、フリ……?」
「ああ……実は」