契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

「初デート、ですね」

はにかんでそう告げたら、彰さんは意地悪な微笑みを浮かべて言う。

「結奈の目的は、文字通り〝甘い〟時間だろうけどな」

む。彰さんってば、やっぱり私の頭の中がお菓子だらけだと思っているでしょう。

「……そうでもないですよ?」

ひとりごとのように呟いて、上目遣いで彼を見る。

すると彰さんはうろたえたように視線を泳がせ、それから苦笑して言う。

「お前の無邪気さには負けるよ。こんな穏やかな気持ち、いつぶりだろうな。結奈がそばにいると調子が狂うんだ。……たぶん、いい意味で」

「彰さん……」

言葉が途切れて、彼と静かに見つめあう。大きな手が私の頭に載せられ、ポンポンと撫でられた。

まだ、強く求めあうような切実な感情はお互いにないけれど、私たちきっと今、似た気持ちなんじゃないかって……そう思えてならなかった。

この、芽吹いたばかりの想いをゆっくり育てれば、いつかは彼と本物の夫婦になれるのかもしれない。そんな希望を抱いた夜だった。



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