契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
8.敵対する友人関係
翌朝、枕元にある彰さんの携帯電話がけたたましい音でなっていた。
休日なのに、目覚ましをかけていたのかな……?
ひとの携帯を操作するのはよくないと思いつつも、目覚ましを止めるくらいなら許されるかと、彼のスマホを手に取る。
しょぼしょぼする目をこすりながら画面を見ると、その音は目覚ましではなく〝冬樹圭吾(ふゆきけいご)〟という男性からの電話だった。
「彰さん、お電話みたいです……けど」
隣で眠っている彼を揺すって声をかけるけれど、ピクリとも動かない。
そういえば、彼は寝起きが悪いんだった……。
どうしようと考えあぐねている間にやがて着信音は止んだ。
ホッとしていたら、一分もたたないうちに、手の中のスマホが同様の着信音を奏で始める。発信者もさっきと同じ男性だ。
重要な電話だろうか。彰さんは社長だし、会社で何かあったとか……?
だとしたら、妻である私が用件を聞いておくくらい問題ないだろうか。
「……はい」
緊張しながら電話に出たら、相手が一瞬沈黙した。彰さんの携帯にかけたのに女性の声がして、戸惑っているのだろう。
「あの、私、道重結奈といいます。夫は今寝ていて……しばらく起きそうにないので、ご用件をうかがおうかと」
説明すると、電話の相手も得心した様子で話し出す。
『奥様でしたか。朝から申し訳ありません、私、社長の秘書を務める冬樹と申しますが』
「あっ、夫がいつもお世話になっております……」
いかにも奥様ふうの挨拶をする自分が、ぎこちなくて照れくさい。