君にチョコはあげない
…やっぱり、虚しいな。
本当は、ウキウキしながらケーキにラップかけるつもりだったのに。
想像してた未来なんて、所詮、想像だけでしかない。
そんな暗い気持ちを振り払うように、私はケーキをお盆にのせて持って、制服を着たまま遥の家に向かった。
――ピンポーン
「はーい」
ケーキを持ってるから肩でチャイムを押すと、遥ママが出てきた。
「あら、夢叶ちゃん。どうしたの?遥は?一緒じゃないの?」
「…うん。それで、その…もう用意してあると思うけど、今日、遥の誕生日だから…その…ケーキ焼いてみたんだ。だから、持ってきた。…遥に「誕生日おめでとう」って言っておいてくれるかな?」
「…ケンカでもしたの?」
あれをケンカというのかはわからない。
だけど、気まずいのは事実だ。私も、きっと遥も。
「…多分」
だから私は、曖昧に答える。
自分でもよくわかってないし。
…ただの〝ケンカ〟ならよかったのかな…。
うん、きっとただのケンカならよかったんだと思う。謝れば済むから。
でも、今日のは、謝るって言ったって、「何に謝ってるの?」っていう話になって、余計に拗れかねないし。どうしようもない。