君にチョコはあげない
「…どーせまた、遥が変なこと言ったんでしょ?」
「…違うよ、遥は変なことは言ってないの。ただ私が、うっかりしちゃって…遥を怒らせちゃった」
なるべく心配はかけないように、できるだけヘラッとしながら言う。
…あと、もう何にも落ち込まないで済むように。
「そうなの…?遥に気を遣ってるとかじゃないよね?」
「ううん、大丈夫。…まぁ、そんなわけだから、ケーキ、渡しておいてくれるかな?一応、味に自信はあるから」
なんてったって、〝意外と完璧主義〟らしいから、私。
すっごい頑張ったし、自分でも満足いく出来だもん。
「そっか、わかった。できるだけ早く仲直りしてくれたら、私も嬉しいな」
「…できると、いいな。…じゃあ、行くね。ばいばい」
「またね、夢叶ちゃん」
「…ん」
またね、かぁ…。
遥ママのことは好きだけど、正直、遥とももう終わりかもしれない今、そんななんでもないような会話にも、いちいち考えてしまって、素直に返事できない私がいる。
…ついに遥に、嫌われちゃったかもしれないし。
…でも、もしかしたらそれでもいいのかもしれない。その方がいいのかもしれない。もうすぐ離れちゃうから。
綺麗な思い出として、期待なんか残さないでいた方が…いいのかもしれない。