君にチョコはあげない
ホワイトデー
ここ最近、夢叶に避けられてる。
原因は多分、バレンタインの日の、あのこと。
あの日からずっと、夢叶とはまともに話せていない。
期待してしまった俺が悪かった。
あんな薄暗くなるまで待っててくれたからって、夢叶が俺のこと好きだとは限らないのに。
毎年毎年、絶対にバレンタインチョコだけは、作ってくれなかったから。
…あんなに悲しそうな顔をした夢叶は、生まれてからずっと一緒にいるけど、見たことなかった。
…でも、そんな顔をさせたのは、紛れもなく俺だ。
あの日、帰ってみたら、物凄く美味いケーキがあった。
その日にもらったどんなチョコレートよりも、ずっとずっと美味しかった。
俺の誕生日でもあったから、家族の誰かが買ってきてくれたんだろうと思った。
…けど違った。
夢叶がわざわざ作ってくれたんだ。…俺のために。
「…こっちも生気がないわね」
「……」
「…。あ、夢叶」
「え?」
夢叶の名前に、こんなにもわかりやすく反応しちゃうのって、多分俺ぐらいだと思う。
「やっと気がついた?夢叶の幼なじみの遥くん」
「…、松島(まつしま)かよ」
夢叶の親友…らしい松島は、二年ぐらい前に彼氏持ちになった自称恋愛マスターだ。