君にチョコはあげない
――ガチャ
「…っ、夢叶、」
夢叶の瞳の中に俺が映ってる。
それだけで、どうしようもないくらい、胸が締め付けられる。
「…なんか久しぶりだね、遥」
「…」
…たった一カ月話してないだけで久しぶりに感じるのは、その分今までたくさん話していたからなんだと思う。
…当たり前だと思ってた。夢叶と毎日話せるのは。
せいぜい、どっちかが旅行とかにでもいかない限り、ほぼ毎日話してた。
「…って、避けてたのは私の方だよね、ごめん」
「いや…あれは確実に俺が悪かったし」
しおらしくなる夢叶に、俺は重ねて謝る。
…あんな態度とったのは俺で、どう考えても俺の言葉足らずなのに、なんで夢叶が謝るんだよ…って、言いたくなる。
だけど、夢叶はそういう性格だ。
「そうだ…これ」
「…かわいい」
俺の取り出した紙袋を見て、顔を綻ばせる夢叶。
…お前の方が可愛いよ、なんて、マンガのヒーローでもないし、言えない。
本当は伝えてみたいけど、口が上手く回らないから、今日も言えないままだ。