君にチョコはあげない


「…あけていい?」

「もちろん」



少し躊躇いがちに聞いてきた夢叶は、俺の返事を聞いた途端に、目をキラキラさせて、慎重に紙袋をあけていた。

…ほんと、可愛いやつ。



「…かわいい。これ、遥が選んだの?」

「そうだよ」



ったく、それ選ぶのにどれだけ恥ずかしかったことか。

…でも、夢叶がそんな風に笑ってくれるなら、いくらでも買ってきてやるよ。



「…私のために?」

「……そーだけど」



上目遣いで聞かれたら、「母さんの誕生日プレゼント選ぶついで」とか、「友達が彼女へのプレゼント選ぶのに付き合ったついで」とか、考えてた言い訳だって出なくなる。



「…ありがと、遥」

「おう」



…またこうして話せて、すごく嬉しい。


…けど、なんでそんなに涙目になってんだよ。



「あ…これ、は……嬉しくて。嬉し涙なんて、初めて出たよ」

「なに噓ついてんの」



そんな下手くそな噓は、誰だって見破れるに決まってんだろ。
ましてや、幼なじみの俺に対して、そんなの通用するわけない。




< 19 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop