君にチョコはあげない
「…そんなに食べたかったの?私のチョコ」
「うん」
「成長期コワ」
いくらなんでも、食い意地張りすぎでしょ。
なんてさ。
量とかじゃなくて、「誰から」のチョコなのかに着目してくれてるんなら、嬉しいけど。
「…ちげーよ」
「え?」
「んーん、なんでもない。部活行ってくるわ」
「おー、頑張れ」
教室を出ていく遥を見送ったあと、由里子がさっきの話を再開させる。
「…夢叶(ゆめか)は、毎年あげないよね、遥くんには」
「…そーだね」
「いいの?中学入ってから、さらにモテちゃってるじゃん、愛しの幼なじみくんは」
「…そりゃあ、見た目はかっこいいし。…サッカー部だし?」
もしも。
万が一、由里子が遥のことを好きになっちゃったら…なんて考えて、私が知ってる…多分、私だけが知ってる、遥のいいとことかは、独り占めしたくて、当たり障りのないような言葉をつらつら並べる。
…まぁ、由里子に限って、その心配はないはずなんだけど。今度彼氏さんとディズニー行くって言ってた。