君にチョコはあげない
「…ほんとに、嬉しいの。ありがと、遥。大切にするね、一生」
「…ほどほどでいいわ」
頑固な夢叶のことだから、きっとこれ以上追及しても教えてくれそうになかった。
だから俺は、いつか話してくれるんじゃないかって思って、なかったことにした。
「…ううん、消耗品だけど、使い終わっても大切にしたいな。宝箱に入れる」
「そんなん、いつでも買ってやるけど」
「……そ、っか」
やっぱり、いつもと様子がおかしい。
それとも、俺と話すのが久しぶりだから、緊張してるだけなんだろうか。
「じゃあな、また明日。明日は、一緒に学校行こう」
「……ごめん、明日は寝坊する予定なの。だから、明後日ね」
「なんだそれ。まぁでも、わかった。じゃ、また」
「……バイバイ」
隣の家に帰る俺を、忠犬のしっぽように見えなくなるまで手を振っている夢叶。
寒いし、夢叶は女子なんだから、お前が先に入れよ…なんて思いつつ、俺は家の中に入った。