君にチョコはあげない
♡
その日は、突然やって来た。
――ピンポーン
転校してきてから初めて迎えた夏休みが数日過ぎて、課題も泣く泣くやり始めた7月某日。
向こうでの仕事を辞めたのにまたこっちで新しくパートを始めたお母さんは、スーパーに働きに行っていたし、お父さんも仕事に行ってるから、前の一軒家に比べたら格段に狭いアパートの一室で、私はひとり、アイス片手に録画したドラマを見ていた、
ら。
「…あぁ、通販で頼んでたものが届くとか、言ってたなぁ…」
再生していたドラマを一旦止めて、アイスを口に咥えて、片手にハンコを持って玄関に向かって、チェーンを外す、
……と。
「…よ」
「……?」
――バタン
「おいこら閉めんな、夢叶!」
混乱していた私は、幻覚でも見たんだと思って、慌ててドアを閉めたけど。
……どうやら現実らしい。
やけに生々しい、遥の声が聞こえた。