君にチョコはあげない





その日は、突然やって来た。



――ピンポーン



転校してきてから初めて迎えた夏休みが数日過ぎて、課題も泣く泣くやり始めた7月某日。

向こうでの仕事を辞めたのにまたこっちで新しくパートを始めたお母さんは、スーパーに働きに行っていたし、お父さんも仕事に行ってるから、前の一軒家に比べたら格段に狭いアパートの一室で、私はひとり、アイス片手に録画したドラマを見ていた、

ら。



「…あぁ、通販で頼んでたものが届くとか、言ってたなぁ…」



再生していたドラマを一旦止めて、アイスを口に咥えて、片手にハンコを持って玄関に向かって、チェーンを外す、

……と。



「…よ」

「……?」



――バタン



「おいこら閉めんな、夢叶!」



混乱していた私は、幻覚でも見たんだと思って、慌ててドアを閉めたけど。

……どうやら現実らしい。


やけに生々しい、遥の声が聞こえた。





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