君にチョコはあげない
幻覚じゃないことを確認するために、私はもう一度、恐る恐るドアを開ける。
……やっぱりそこには、遥みたいな人がいて。
「……ドッペルゲンガー?」
「んなわけあるか。正真正銘、君の幼なじみの鈴城(すずしろ)遥くんですよ」
「…な、んで……?」
「こっちが聞きたいわ、アホ。とりあえず、中入れてくんない?」
――バタ…
「させるかよ」
勢いよくドアを閉めようとしたら、遥が足を挟んでいて、そのドアが閉められることはなかった。
「痛ってぇ…」
「あ、ごめん」
…勢いよく閉めようとしたものだから、今の遥の足を想像するだけで、私の足まで痛くなりそうだ。ほんとにごめん、遥。
「…夢叶のせいでケガしたから。部屋入れてよ。手当てして」
「……わ、かった」
私のせいでケガさせたのは本当だから、渋々だけど、遥を部屋に入れた。
昔から知ってる遥の匂いが、部屋の中に入ってきて、懐かしくて嬉しくて、あったかい。