君にチョコはあげない
「……で?」
「う、うん。救急箱、持ってくる」
「別にいいよ、そんなに痛くないし」
「…じゃあ、帰……」
じゃあ帰りなよって言おうとしたけど、できなかったのは。
――ドサッ
「うわ!」
遥の足と私の足が引っ掛かって、私が転ばされたから。
「…なにすんの、遥」
「俺さぁ」
「ちょ、」
人の話を聞かない遥なんて珍しい。
いや、正確に言えば聞いてて答えてないのかもしれないけど、どちらにせよ同じことだ。
「すっげームカついた」
「なに、に…」
「お前がいなくなったことに決まってんだろーが!」
「…!」
普段、どんなに怒っても、声を荒げることなんてしないくせに。
期待したいけど、期待したくない。
…3割くらいは期待したいけど、残りの7割くらいは期待したくない。