君にチョコはあげない
「…そりゃあ、ずっと一緒にいた幼なじみがいなくなったら、変な感じするか」
なるべく期待なんかしないように、「幼なじみ」と意識して言ってみたけど、自分で言ったくせに寂しくなった。
「…幼なじみ?ふざけんな」
「え?」
…やっぱりもう、幼なじみを名乗ることすら許されないか。
これでもう、遥に諦めがつくかな。嫌われちゃったみたいだし。
「俺が、どれだけお前のこと好きか、知らねぇだろ」
「…え?」
今、なんて言ったの?
私の都合のいい聞き間違い?
「どれだけバレンタイン、期待してたか、知らねぇだろ」
「…知るはず、ないじゃん……」
ちゃんと遥の声で聞いてるはずなのに、あまりにも都合がいいことばっかり聞こえちゃうから未だに、これは私が作り出した幻覚なんじゃないかって思う。
「そんなのに、1カ月も話せなくて。やっと話せたと思ったら、勝手にいなくなるし。どれだけ俺が夢叶不足だったか、夢叶にわかる?」
「…わかんないよ、そんなの」
それより、私だって遥が足りなかったよ。
自分で選んだくせに、わがままな話だよね、ほんとに。
きっと誰かに知られたら、笑われちゃうかな。