君にチョコはあげない
少し余裕なさげな遥が、イライラしたような口調で聞いてくるから、私は怖気づいてしまった。
…でも、ちゃんと伝えたいんだ、今度こそ。
「わ、私だって、ずっと前から好きだよ、遥のこと。…遥じゃなかったら、ここに上げてなんかいない」
「…は、マジ…?冗談とかだったら、ほんと一生許さないけど」
「…それはこっちのセリフだよ」
これが冗談とかだったら、軽く呪うからね。
「…じゃあなんで、黙っていなくなったの」
「…どっちにしろ、引っ越すのは決まってたし。私のわがままで、お父さんとお母さんを引き離すわけにはいかないと思った」
「なんで話してくれなかったの」
ほんとは、話そうとも思ったよ。
だけどさ。
「…だって、誰かに頼っちゃったら、離れられなくなるもん……」
きっと、もっとみんなのことが大好きになっちゃって、せっかくの決心が鈍りそうだもん。
誰にも言えるわけないよ。
「離れなきゃ、いいじゃん」
「それができないから……」
「ウチ、住めばいいじゃん、今からでも」
「……へ?」