君にチョコはあげない
「…間に合わないかと思った」
「え、なに?」
「ん?なんでもないよ、由里子」
「そう…?」
思わず漏れてしまった呟きに反応した由里子に向けて、私は笑ってごまかす。
「…今まで、なんで遥くんにあげなかったの?チョコ」
「んー…ちょっとしたヤキモチと、ちょっとしたプライド?」
他の女の子からのチョコの山と見て、くだらないヤキモチ焼いたり。
「食べさせるなら絶対おいしいの食べさせて、喜ばせたい。苦笑いは絶対やだ」
そんなちっちゃなプライドが、今までずっと、邪魔してて。
「あー、意外と完璧主義だもんね、夢叶」
「…意外なの?」
「うん。で、どーゆー心境の変化?」
まだ追及をやめる気配のなに由里子は、容赦なく聞いてくる。
しかも、やっぱりニヤニヤしながら。
「んー…」
私は、窓の外でイキイキとサッカーをしている遥を見ながら、ボーッと考える。