君にチョコはあげない
「強いて言うなら」
「言うなら?」
「もうすぐ離れ離れになったら、後悔するなーって思って。きっと来年の今頃は、受験でピリピリしてるだろうし」
「確かにね」
なるほど、と言うように苦笑する由里子につられて、私も苦笑する。
「…ま、そーゆーわけだから、私、今日はちょっと早いけど帰るね」
「はーい。頑張りなよ」
「うん!」
もちろん、全身全霊で作るつもりだよ。
なんてったって、遥のバースデーケーキだもん。
私は大急ぎでカバンに荷物を詰め込んで、ロッカーから着てきたダッフルコートを出して着て、由里子に軽く手を振って教室を出た。
♡
帰ってから大急ぎで手を洗って、まだ一人きりの家で、黙々とケーキを作る準備をする。
道具とか材料とかは、ちゃんとあることを確認してあるから、きちんと台所に並べて、材料は量って作業しやすいようにする。
「おいしくなりますように」
ポツリとそれだけ呟いて、私はケーキ作りを始めた。