君にチョコはあげない


「強いて言うなら」

「言うなら?」

「もうすぐ離れ離れになったら、後悔するなーって思って。きっと来年の今頃は、受験でピリピリしてるだろうし」

「確かにね」



なるほど、と言うように苦笑する由里子につられて、私も苦笑する。



「…ま、そーゆーわけだから、私、今日はちょっと早いけど帰るね」

「はーい。頑張りなよ」

「うん!」



もちろん、全身全霊で作るつもりだよ。

なんてったって、遥のバースデーケーキだもん。


私は大急ぎでカバンに荷物を詰め込んで、ロッカーから着てきたダッフルコートを出して着て、由里子に軽く手を振って教室を出た。







帰ってから大急ぎで手を洗って、まだ一人きりの家で、黙々とケーキを作る準備をする。
道具とか材料とかは、ちゃんとあることを確認してあるから、きちんと台所に並べて、材料は量って作業しやすいようにする。



「おいしくなりますように」



ポツリとそれだけ呟いて、私はケーキ作りを始めた。




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