君にチョコはあげない
手を握ったところから、由里子の温もりを感じて、それがすごく心強かった。
「夢叶なら大丈夫だよ」
「…そんなわけないよ」
「ネガティブよくないよ?告白だって、ズルズル先延ばしにしてたら、一生できないかもしれないんだよ?」
「…うん」
できなくてもいいや。
それどころか、このまま、遥じゃない人を好きになれたらいいのに。
そしたらきっと、告白だってできる。
「…とりあえず、帰ったらケーキ届ける予定」
「そうしな。頑張れ。「おいしい」って言ってもらえたらいいね」
「うん」
それはもう、本当に。
昨日の夜、ケーキは満足いく出来だったというのに、緊張して眠れなかったくらいだし。
…あーあ、早く会いたいなぁ。
なんて、自分のせいなのに矛盾したこと考えてるくらいは、遥が好きだ。
「…あ、ほら。来たじゃん。愛しの幼なじみくん。待ってたかいがあったね」
「…別に、由里子まで待ってなくてもよかったのに」
「私は可愛い親友の恋路を応援してるだけだよ。ま、じゃあ私は帰るから。夢叶、ファイト」
軽くガッツポーズをしてから、遥と入れ替わりになって教室を出ていく由里子。
おかげで、この10×10メートル四方にも満たない、狭くも広くもない空間に、遥と私、二人っきり。