◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。

 これじゃ、間に合いそうにない。
 あと十分弱で一般参加者(歩兵)が突撃してくるというのに。
 ここまで散らかし放題じゃ、事故の元だ。

「あの、よければ手伝います!」
 差し出がましいかもしれませんが、とかのレベルじゃない。この散らかりようを今すぐ何とかしないと、通行の妨げになる。

「いいんですか?」
「いいですよ!」
 ていうかやらせて!

「すみません、慣れていなくて。道にも迷っちゃうし。うう……ぐずっ」

 彼の瞳から零れ落ちる一粒の涙は朝露のごとく澄み切っていて――
 泣いてる場合か!!

「これ、どこに置けばいいです!?」
「あ、はい。こちらに……」

 とにかく時間との戦い。

 通行の妨げになるような段ボールを裏に隠して、見栄えも最低限保たせて。

 今までサークル参加してきた経験を活かし、それと数多くのアルバイト経験を総動員して、彼の求める理想のディスプレイを手戻りなく実現させていく。
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