◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。

 大慌てで鞄をひっつかんで、社長机の上に出していた筆記具などをしまいはじめた。手がガタガタ震えて、ペンを落としては拾い、落としては拾いを繰り返している。

「いやっ、たぶんっ、私ひとりで行った方がいいと思います!」
 社長の動転っぷりに慌てて愛里は進言するが、

「何を言ってるんだ愛里ちゃん! たしかにこの人形(?)を作ったのは他でもない愛里ちゃんだ。というか勤務中に製品で何やってるのかな? まあいい」
「いえ、ちゃんと昼休みに作りました! 主に不良品を使ってます」
「よしよし、いやうん、そんなことは別によかったんだ。むしろ感謝するよ、大いに結構だ。これからは正規品で作ってくれてもいいからね。でもね、あのね、いいかい。これは愛里ちゃんだけの問題ではないんだ。我が社の将来を左右する大事な話なんだよ」

 やはりFUJITA電機に呼び出されるというのは並のことではないらしい。
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