◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
「あの」
隣からおずおずと話しかけられた。
「はい」
「あの……その……」
空気が揺れるような会場の中、声がか細くて聞き取れない。長い髪を濡れた頬にへばりつかせて、例の隣のサークルさんが何かを話しかけてくるけど……
「どうしたんですか?」
なにか困り事だろうか。
「いえ、その……」
彼はなんと言ったらよいものか思案しながら、
「誰も来てくださらないなあって」
ぽそりとつぶやいたその言葉だけは、愛里にはよく聞き取れた。
気持ちが痛いほどよくわかった。
こんなに人がいるのに、自分は誰からも求められていないという現実。