◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。

 研究棟と書かれた看板を曲がる。ようやく涼しい建物の中に入れた。なんだか大きな病院みたいな雰囲気。ここは部外者が入っちゃいけなさそうな場所だ。と、思う間もなく、部屋に入る際に社員証の提示を求められた。
「ごめん、この先はゲストカードじゃ通れない」
 いかにも企業機密を取り扱っていますといった風貌のため予想はしていた。

「私、どこにいたらいいかな?」
「行ける範囲ならお好きにどうぞ。不便があるといけないから、郡山を付けようか?」
「え、いや、それは……」
 愛里が振り返ると、郡山とばちっと目が合う。郡山も尚貴と同じくらい背が高くて、動く壁のようについてきていた。
(それって逆に不自由な気がする……)
 トイレ行くにも、ゲストカードだと通れない場所があったりするからと言われたが、丁重にお断りする。あれだけコンビニがあれば大丈夫だろう。
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