◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
その男は一歩二歩とこちらに向かって歩いてくる。
上品なスーツで、堂々とした雰囲気で、
快活そうな丸く大きな瞳は、でもどこかで、見たことある人で……。
(あっ。も、もしかして……長男の、ええと……名前なんて言ったっけ? 秋なんとか……)
「チッ、アニキかよ……」
その人の後ろから貴志が両ポケットに手を突っ込んだままのっそりと立ち上がってこちらに向かってくるのが見えた。
「秋貴様」
あ、そう、秋貴(あきたか)様って名前だった。黒服二人が驚いたように一礼して脇に退くのをぼんやりみながら、愛里は頷いた。あの時すれ違った王子様がここに降臨なさったらしい。