◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。

 秋貴は愛里に向き直り、紳士的に手を差し伸べてくる。弟の振る舞いに腹を立てたまま振り払おうかとも思ったが、この人には一応助けてもらったし、ここは素直に手を取っておいた。エレベーターから愛里を降ろし、ソファまでエスコートしながら秋貴が「君は、どうしてここに?」と問いかけてくる。着席するよう促され、さっきの場所まで戻ることができた。ふう。

「なおさんに呼ばれて、来たんです」
 ふっかふかのソファに沈み込みすぎ、慌てて姿勢を直しながら愛里は答えた。

「はあ? 尚貴に?」
 貴志が意外だというように目を丸くする。
「あいつ漫画ばっかり読んでる印象しかなかったんだが、まさか女がいたとはなァ」
 尚貴を軽んじるような言い方に愛里はイラっとし、貴志を睨む。
「おお、こわいこわい」
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