◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。

「ちょっと意外だな」
 秋貴はあごに手をやり、考えるようなしぐさをとる。

 貴志はフンッと鼻を鳴らして言った。
「尚貴あいつ漫画家になるのが夢だとかほざきやがって、ばっかじゃねーのって言ってやってくれよお嬢ちゃん。現実見ろっての。ははっ」
 どかっと横に腰かけられ、
「な……っ?」
 スプリングに翻弄され、愛里は貴志にもたれかかるような感じになってしまった。貴志はこの機を逃すまいと肩を組んでくる。

「俺らはフジタの息子なんだぞ。フジタの中で生きていくのがいいに決まってんじゃねぇか。はっ。俺だってロックスターになりたかったよーあははは」
 貴志は愛里を抱えたままギターを弾くように指を構えると、ふざけたようにエアギターを奏でる。ひとしきり好き勝手めちゃくちゃにやって、そっと近寄ってきていたコンパニオンめいた女性たちの「あら」「お上手ね」なんて黄色い声が上がる。
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