◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
「ハハッ、どーもどーも。ま、俺は、ちゃあ~んと、継ぐけどね会社」
すると今度はまた「大変ね」「ご立派ですこと」なんて声に囲まれて、にこにこしている。
「ちょっと、やめてください。離して」
「おい貴志、絡むなって言ってるだろ」
秋貴の制止にも貴志は無視して肩を組んだままだ。貴志はホストみたいなグレースーツを着ているくせに、生地がちっともペラペラじゃないのが憎たらしい。でも上等物で涼しそう。
「なおちゃんは、まだ、若いんだな~」
貴志の言葉に女性達もなんともいえないような困り顔で微笑む。彼女達の装いは一応会社員の着るようなスーツだけど……胸の谷間が見えていたりなんとなく華美な印象で、大人の世界って感じだった。愛里のことなど相手にもしていないのか、それとも貴志の遊びに慣れているのか、妬いた様子もなく見守っている。
何か言いたげなまま黙っていた秋貴が、口を開く。
「ま、尚貴もそのうちわかるさ。俺達はここで生きていくしかないんだって」
それに呼応したように貴志も続く。
「エアギター弾くようになるなる、ハハハハ」
そして周囲の女性達が朗らかに笑う。
夢を語った尚貴の真剣さが、この場の全員にコケにされているようで、たまらなく不愉快さを感じた。