◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。

 そういえばと愛里は思い出す。まだ着信拒否設定を解除していない。これじゃ自分からも電話をかけられない。設定をいじればいいのだが、着拒なんてしたこともないし不慣れなのでとりあえずは別の方法を模索してみる。付与されたゲストカードでは各扉を開けることはできないが、透明なガラスの大窓から中の様子を見られるようになっている部屋もちらほらあるのだ。愛里は尚貴の入った部屋を思い出しながら、ふらりと歩き回った。通行人に聞くのもありだ。と思っていると、ガラス張りの部屋にいる白衣を着た女の人に指さされた。顔を向けると、その人の横に立っている尚貴とぱちりと目が合った。いた! ドアの方に駆けてきてくれる。

「どうしたのエリンギちゃん」
 尚貴はチェック柄ブラウンスーツの上から白衣を羽織っていて、また違った知的な雰囲気を醸し出している。
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