◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。

 夕暮れの中、二十分くらいで目的地についた。そこは黒を基調にしたシンプルさを感じる洋風の料亭で、いかにも高級ですといったギラギラした雰囲気ではなく、あ、これなんかたぶん高そうなとこかな? みたいな感じのお店。だけどおそらく、高いんだろう。なんというか、わかりにくくしてある分、余計に高そう。あのへんのさり気ない生け花とか、棚にグラスがライトアップされているところとか。

「接待にも使われる店がもう一つあるんだけど、こっちは僕のお気に入りで」
 お出迎えするスタッフに慣れたように挨拶を返しながら、尚貴が言う。
 その接待に使われる店というのはおそらく見た目にも高そうなのだろう。
 高級料亭も憧れるが、あまりにも格式高すぎるのはしんどいので、こっちのシンプルな方が助かるかもしれない。

 なんて思っていた。この時は。

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