◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
コミケ会場で、なおさんもこんな気持ちだったのかなあ?
自分には無理だとかやっぱりできないとか、なおさんも何度かくじけかけていた。
けど――たしかに。
たとえばコミケ会場で尚貴に委縮され続けても困るだけだとは思う。
幸い尚貴は、開場の拍手にただただ感動したり、愛里の手助けには感謝してくれたり、コミケを純粋に楽しんでいた時間の方が長かった。
(そう思うとなおさんは、偉いな)
変に恐縮したり自信を無くして卑屈になったりされたら、もっと厄介なことになっていただろうに、尚貴はそういう姿などは見せなかった。
愛里の心の中に、ふと反省の気持ちが沸き起こってくる。
(……そっか)
私は何をやっていたのだろう。
せっかくの楽しい宴を。なおさんとの食事を。
……テーブルマナーとか、味の感想とか、もし失敗したって、きっと大丈夫だ。
だって、なおさんがコミケでどんなに大失敗しても、私は全然嫌いになんて思わなかった!
そうだ。きっと、今も同じだ。
なおさんだって、私だって、いつもいつも完璧でいられるわけじゃない。
一番ダメなのは、大切に思っている人を、こんな顔にさせていることだよね。