◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
隣のサークルはどうかというと。
一冊も売れないどころか、足を止める人もまったくいなかった。
(しょうがない、しょうがないよ……)
これは、彼が特別悪いわけではない。
愛里だって、初参加のときは一冊も売れなかった。
一冊も。
読者を楽しませたいと、乏しい知識をかき集めて、眠い目をこすってギリギリまで手直しに手直しを重ねて入稿したのに、それなのに、たった一日しか販売できない当日、誰も興味を持ってくれなかったのだ。
その日は恥ずかしさで途中で帰りたくなった。
(でも、帰らなかったけどね)
そんな、あの頃を思い出して胸が痛くなる。