◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。

「ごめん! なおさんっ、私が悪かったと思うっ」
「エリンギちゃん……?」

 愛里は声の大きさも気にせずそう言うと、頭を下げる。そして、続けた。

「正直に言うね! テーブルマナー教えてもらえないかな……? 私、全然知らなくて、気になって気になって。ああっ、ほとんど料理もう終わっちゃったと思うし、今更だけど……っ。変だとか間違ってること、あったら教えてほしいんだ。直すから!」

「あはは、そんなの、気にしなくてもよかったのに」

 尚貴はほっとしたように微笑む。
「じゃあ、また今度、もう一度ここに来ようよ!」

「ふえっ!?」
 思わず変な声が出た。

「今度はもっとゆっくりと、楽しもう?」
「……うん」

 ……おかわりを要求してしまったようで申し訳なく思いつつ、でも、でもでもでもでもまた来たい。次の約束が、ほしい。

「あ、うちの執事に教えてもらうのでもいいよ。郡山でもいいし。テーブルマナーの練習、やろうやろう。それで、またご飯を食べに行こう!」
「楽しみ!」
「うん!」

 にっこり笑顔の二人の前、食器を下げられて空いた中央スペースに、大きな生け花が運ばれてきた。

「わ。わわわ~?」
 目を丸くして、よくよく見ると、木々の合間に隠されるようにしてマカロンやアイスクリーム、プチフールが配置されている。
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