◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。

「もしかしてこれ、デザート???」
 植物をお皿の代わりにするなんて、なんて風変わりな。でも、小さなスイーツが花のように咲いているみたいで、可愛らしい。
「可愛いっ。面白いね!」
 これはもはやアートの域だった。
「でしょ? ふふふ」
 尚貴がドヤ顔をして説明してくれる。
「ここのシェフは、美大も出ていて、料理に芸術を取り入れているんだよ!」

 言われてみれば、これまでに出てきた料理も、照明が消されたり逆にライトアップしたりなど、演出が凝っていた。盛り付け方も、なんか言っていた気がする。森を表現していたり、海を表現していたり……正直雲の上の世界すぎて聞いても分からないと思って、あんまりちゃんと聞いていなかった。

「ごめん、なおさん。私、こういう料亭って初めてで、すごく緊張しちゃってた。知らない間に変な行動しちゃってたらどうしよう、って、背伸びして、身動きが取れなくなって……でも、なおさんは、きっと、わかってくれたよね。私が最大限で、楽しめば、それでいいって」

「もちろんだよ」
 尚貴は優しく頷いてくれる。

「僕も、世間知らずなところ、いっぱいあるでしょ。コミケでは、迷惑をいっぱいかけたよね。だから、いいんだよ。エリンギちゃんは、何にも気にせず、エリンギちゃんのまま、楽しんでくれたらいいから」

「うん」

 草花の間から二人で探し出したデザートは、とても甘くて、ほっぺたがおっこちそうだった。

 また来たいな。
 なおさん、ありがとう。
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