◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
 自宅に戻り、キャラカクテルを作ってもらいたい自作漫画を選別する。

 いろいろあるけどどれにしよう?
 思い入れのある作品ももちろんいいけど、イメージカラーがはっきりしている漫画の方がいいかもしれない。twitterにアップして仲間にも見せたいし、その時にわかりやすくなるよね。

 ベッドの上に広げた自作漫画を眺めているうちに、はたと気が付く。

 最近、創作をおさぼり気味だ。

(だめじゃん私、夢追い人なのになー……)

 デスクについてペンを握ろうとして、でも脳裏には尚貴が浮かんできてしまう。

 今頃仕事を片付けているであろうなおさん。
 仕事が終わり次第、きっとすぐに来てしまう。
 そう思うと、おちおち漫画を描いていられない。

(いいのかな私……)

 だけど少女漫画、恋は大事だ。

 恋に全力投球する日々が少しくらいあったっていいのではないだろうか。

 無理してただただページ数を描いて独りよがりに安心するより、きっと創作にプラスに働くと感じる。

(うん。今は、この恋を頑張ろう)

 十六時になるとなおさんからLINEが入った。

 なお:仕事はもうすぐ終わりそう! 五時にはエリンギちゃんちに着くと思います。

 あと一時間でなおさんが来る。

 愛里は用意していた白黒チェック柄の丸ネックワンピースに着替えると、メイクを直し、髪を整え、鞄の中を整理整頓して、ついでに財布の中のレシートを捨て、それから靴を磨いた。

 やることが後から後からでてきて追いつかないほどで、すぐに五時になってしまった。

(まあ、やれる限りやったよね)
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