◎あなたのサークルは、世間知らず御曹司の隣に配置されました。
「ご到着でございます。お疲れ様でございました」
「ありがと三屋(みや)。じゃ、行こうエリンギちゃん」

 運転手(三屋さんっていう名前らしい)にお礼を言って、車を降りた。いよいよだ。

「ちょっと歩くからね、ごめんね」
「えっ?」

 着いたんじゃないの?

 よくわからないままに、三十代くらいのメイドさん二人がにこにことお出迎えしてくれて、鞄を持ってくれた。現代のメイドさんは、メイドカフェのようなふりふりした恰好をしているわけではなく、もっとシンプルな――白いブラウスに黒いパンツを履いて、さらに黒いウエストエプロンを着用していた。

(わあ、これが本物……)

 たしかにメイドの恰好をしていては目立ちすぎる。どちらかというとホテルマンやウェイトレスのような雰囲気だ。リアルメイドさんに出会えたのはかけがえない経験だが、本音を言えばメイド服が見たかった。ちょっと残念。

 そして仲良く歩くこと五分。
 五分!

(ああそうか敷地……なんだ。ここも、ここも、全部。庭ってことなのかな……)

 続く飛び石をひたすら踏み続けた。お寺参りでもしているような気分になりながら、「もうすぐです」とメイドの一人に言われて顔を上げると――おとぎ話に出てくるような白亜の豪邸がそびえたっていた。
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